2023年2月に竣工した「大宮の長屋」
七軒長屋のうち、二軒をフルリノベーションし、建物全体の耐震性を改善するプロジェクトです。
今回は点検を兼ねたメンテナンスに行ってきました。
今回のメンテナンスのきっかけは、一軒の住まい手さんが退去されたこと。
次の方に気持ちよく住んでもらえるよう、現地でクライアントと一緒に状態を確認し、必要な手入れを進めることになりました。
この長屋では、賃貸住宅ではあまり使われないことも多い無垢の床材をふんだんに使っています。
一般的には、傷や汚れが懸念される無垢材なので賃貸で使われることは少ないですが、ここでは無垢材でも固めの赤松の材を選定し使用しました。
このお部屋に住まわれていた方はとても丁寧に暮らされていたようで、床の傷も少なく、木の表情も美しく保たれていました。
フローリングには大阪塗料工業のユーロカラーオイルクリヤーを塗装しました。
透明のオイルなので色が大きく変わることはありませんが、塗ったあとはほどよい艶が出て、木目がよりくっきりと浮かび上がります。
無垢の床材には、これまでの暮らしの痕跡がやさしく刻まれていて、メンテナンスによって新たに生まれ変わりました。
暮らしが暮らしへとつながっていく。
そんな循環がこの空間にはあります。
外壁は一部、塗装の剥がれている箇所がありました。
オスモ&エーデルのオスモウッドステインプロテクター1727ローズウッドで塗り直しを行い、落ち着いた色味が板金との相性も良く、美しく仕上がりました。
竣工当時のような新しさがよみがえり、外観が整うと建物全体の表情もぐっと引き締まります。
あわせてバルコニー部分も再塗装を行いました。
こちらも風雨にさらされやすい部分ですが、塗り直すことで木部の保護にもなり、見た目にも清々しさが戻りました。
正面の木格子は杉の材が焼けてきたこともあり、その色に合わせてオスモ&エーデルのオスモウッドステインプロテクター1706オークを選定し仕上げています。
汚れが目立つ部分はサンディングし塗装しました。
再塗装を行うことで、木肌の質感と色味が美しくよみがえり、ファサード全体が引き締まりました。
新築でもリノベでも、住まいは“完成して終わり”ではなく、住まい手の暮らしとともに変化していくものです。
その変化を見守り、時に手を加えることで、より豊かな時間を育てることができると改めて感じた一日でした。
この長屋もまた、新しい住まい手を迎え、新たな物語が始まろうとしています。
WASH建築設計室 スタッフ 野﨑